相続人に行方不明者がいる場合の相続登記

相続した家や土地を売却するためには、まず相続登記(不動産の名義を相続人に変更すること)をしなければなりません。

遺言書があれば良いのですが、遺言書がない場合には相続登記をするには被相続人(不動産の名義人)の相続人全員で遺産分割協議をする必要があります。

相続人の中に現在の行方が分からない者がいる場合でも、その者を無視して遺産分割協議をすることはできません。

相続人に行方不明者がいる事例

Aさんが亡くなりその相続人は配偶者BさんとAの子Cさんですが、Bさんは10年前に家を出て行ったきり帰ってきていません。

AさんはBさんがいつか帰ってきてくれることを信じて離婚はせずにずっと待ち続けていましたが、とうとう亡くなってしまいました。

相続人に行方不明者がいる場合の問題点

亡くなった者の配偶者は常に相続人となります。
今回のケースではAさんとBさんは、戸籍上は夫婦のままですので遺産分割協議をするにはBさんの協力が必要です。

相続人に行方不明者がいる場合の解決方法

解決方法としては以下の2通りが考えられます。

  • 不在者の財産管理人選任
  • 失踪宣告

不在者の財産管理人の選任と失踪宣告の違い

不在者の財産管理人

不在者の財産管理人とは、その名のとおり行方不明者にかわってその者の財産を管理する権限を与えられた者です。

不在者の財産管理人が選任された場合には、その管理人が行方不明者にかわって遺産分割協議に参加します(権限外の許可が必要)。

なお、相続人が管理人となってしまうと利益が相反しますので、相続人以外の者が就任する必要があります。

ご依頼があれば当事務所の司法書士を管理人候補者として申立ていたします。

失踪宣告

一方、失踪宣告とは、一定の要件のもとに生死不明者を死亡したものとみなして、その者の財産につき相続を開始させる手続きです。
生死不明者は死亡したとみなされるので、Aさんの相続人にはなりません。

なお、生死不明者であっても失踪宣告をすることは義務ではありませんので、不在者の財産管理人を選任して解決することはできます。
遺産分割協議のためだけなら、比較的簡易な手続きである不在者財産管理人で対応することが良いと思います。

事例のケースでは、例えば不動産がAさんの単独所有ではなく、夫婦共有名義となっている場合には、失踪宣告を選択する方が良いかもしれません。